2.2 家族関係の進化心理学ーー出生順と立場争い
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出生順に関する研究を通して進化心理学に貢献している 家庭内のダイナミクスがどのように人格の発達やクリエイティビティに影響を与えているのか、進化理論を用いて理解を試み、出生順は確かに人々の性格と知能に対して影響を持つと主張している
出生順による影響のメカニズムは、家庭内やきょうだい間の相互作用を通じたものであるため、生得的要因ではなく社会的要因として考えられる
第一子は資源の競争において生まれながら優位に立つため、第一子とその後の子供たちは、それぞれ違う性格を発展させることによって資源状況に対応する
家庭内の子どもの数が増えれば増えるほど、それぞれに振り当てられ得る資源が減ってしまうため、最も資源を獲得しやすい第一子は知能面でも最もよく発達できるという
研究における興味
1979年に著書"Freud, Biologist of the Mind: Beyond the Psychoanalytic Legend"を出版し、精神分析学の起源と有用性について議論し、科学史分野のファイザー賞を受賞した
主に動物(鳥類、ゾウガメなど)の習性と進化の関係について論文を多数発表
1995年に最初の出生順研究の論文を発表し、出生順の効果が存在しないことを主張する研究結果について反論した上で、進化理論を用いて出生順の第一子と他の子供の性格に対する影響を分析した
1996年に著書"Born to Rebel: Birth Order, Famiy Dynamics, and Revolutionary Genius"を出版
「なぜ同じ過程で生まれ育った子供同士は、異なる家庭で育った子供同士と同じくらい性格が異なるのか」という問いに答えた
サロウェイは出生順による影響が大きいと考える
出生順は年齢、体型、力、優劣順位などといった、きょうだい間の一連の違いを意味する
同じ家庭環境内であっても、第一子とその弟妹達は資源や親の愛情を競争するためにそれぞれの戦略を持つようになり、それゆえに異なる性格を発達させる
優位に立つ第一子は両親の権威と価値観により賛同的な態度を取りやすく、逆に下のきょうだいは第一子に対して反抗的な態度や挑戦的な行動を取りやすい
さらにサロウェイは1700~1875年の間の600人あまりの科学者が進化理論を受け入れる程度を分析した
弟妹達が進化理論を受け入れている程度は、第一子たちの三倍にも達している
出生順が下の人の方がより挑戦的な学説を受け入れやすい
2007年、サロウェイは"Science"誌で出生順と知能の関係についての論文を発表し、出生順と知能の関連を分析した上で、第一子の方がより高いIQを持つという現象を説明することを試みた
彼はきょうだい間の知能の違いは、社会的要因や家族間の相互作用に由来すると考えた
子供の数が増えるに連れ、家庭内にある有限な資源(親の愛情など)が子供一人あたりに割り当てられる分は少なくなる
第一子はその成長過程において最も多い資源を獲得しているため、知能の発達が最も進んでいることになる
当初、遠回りをして進化心理学の領域に引き込まれた
生物が長い年月をかけて進化してきたとする異端な理論をダーウィンが受け入れるに至った知的道筋を理解しようとしたこと 1835年にガラパゴス諸島を訪れた当初、ダーウィンはきわめて説得力のある進化の証拠であるダーウィンフィンチについて、あまりに奇妙で、単一の共通祖先から進化したとは思えない、とした ダーウィンのフィールドノートには彼がムシクイフィンチをミソサザイやムシクイと間違えた記述がある。
それ以外の12種のダーウィンフィンチについても、そのくちばしの多様さに惑わされ、4つの異なる科に含まれると考えた(Sulloway, 1982)
ダーウィンはイギリスに戻り、ロンドン動物学協会の優秀な学芸員であったジョン・グールド(John Gould)に意見を聞いて初めて、これらの多様なガラパゴス諸島のフィンチはすべてごく近接の一つの亜科に属することを確信するに至った この分類学的評価を通して、ダーウィンはこれらの種類の鳥は一つの祖先から進化したと結論した(Darwin, 1845)
また、同種のマネシツグミのいくつかの「変種」とされていた鳥についても、グールドの助言のおかげで、実際には3つの独立種であり、ガラパゴスの異なる島々の固有種であるとダーウィンは考えるようになった(Sulloway, 2009a)
この証拠に基づき、ダーウィンは新種の増加は未分化集団の地理的隔離によって促されるという理論を提唱した
1837年の春、ダーウィンとグールドは多くの科学者たちに、ガラパゴスで発見したこれらの証拠を公表した
ダーウィンよりも鳥類学的証拠についてあらゆる面で理解があったグールドでさえ、創造説の信奉者のままだった なぜ、ダーウィンだけが1837年にガラパゴスで発見した証拠について急進的な解釈をしたのかを理解しようとするうちに、私は心理学のフィールドへ、そして性格と認知スタイルの個人差の研究へと向かっていった
説得力のある科学的証拠を示されても、科学者は必ずしも進化のような急進的で社会的に危険な理論を積極的に受け入れるわけではない
証拠に対して異端な解釈をするには革命家気質が必要
この結論は家庭内における役割やニッチ、親への愛着のパターン、家族との生活におけるその他の側面といった、家族ダイナミクスの研究へと私を導いた
20年にわたる壮大な個人誌研究を通して、私はきょうだいというのはダーウィンのガラパゴスフィンチと大いに似ていることに気づいた
きょうだいは直接的な競合を少なくするために多様化する傾向にある
限られた同じ支援をめぐって競合する異なる種のように、きょうだいは親からの投資をめぐって競合し、そのために家族内で占領されていないニッチを開拓する(Sulloway, 1996)
これらの異なるニッチは、年齢、身体サイズ、力、性別およびその他の個人的特性と相関する
個体発生において、きょうだいは一般的に、系統発生の過程で生物が達成するある種の適応放散(adaptive radiation)を遂げる このようなきょうだいについての考え方は、行動遺伝学の分野で浮上し始めている新たな証拠と思いがけず一致する形になった 1980年代なかばまでに、行動遺伝学者は、同じ家族で一緒に育ったきょうだい同士の違いは、大きな母集団からランダムに選ばれた人との違いと同じくらいに大きいことに気づいた(Plomin & Daniels, 1987; Dunn & Plomin, 1990)
一緒に育った、あるいは離れ離れになって育った双生児と非双生児のきょうだいを対象とした研究成果から、行動遺伝学者は性格のすべての分散のうち約40%が遺伝子によって説明され、他の20%が測定誤差であると述べている(Loehlin, 1992)
残りの分散の40%が環境的影響に起因すると言われている
この環境による分散のうち、育った家庭に代表されるきょうだいが共有する環境に起因するのは、一般的にはわずか約5%に過ぎない
このことは、きょうだいで異なる環境、すなわち非共有環境に由来する性格の分散は、共有環境由来の分散の約7倍(35%)にあたることを意味している これらの行動遺伝学の知見が示す最も重要な結論は、評論家が主張するように親や家族は性格にほとんど影響していない(Rowe, 1994; Harris, 1998)ということではなく、家族はそもそも共有された環境ではない
出生順は、きょうだいが家庭環境を違った形で体験する潜在的要因の一つ
家族に年少の弟妹がいる場合、一般的に言って第一子は代理親としてのニッチを築く(Sulloway, 1996; 2001)
結果として、一番年長の子は年少の弟妹よりもまじめで責任感が強くなる傾向にある
さらに年長の兄姉は家族の中で最初に生まれたため、親からの投資(認知的・言語的な刺激を含む)を他のこと分け合うことなく受け取ったことにより、年下の弟妹よりもIQが高く、学業的な成功を修める傾向にある(Kristensen & Bjerkedal, 2007; Sulloway, 2007)
親を喜ばせるために学業でよい成績をとる、彼(女)らの知識を弟妹に教えるといった年長児の努力も、これまで立証されてきた知的パフォーマンスの違いを説明する要因なのかもしれない(Zajonc & Sulloway, 2007)
対して、年下の弟妹は別の方法で親から愛されることを求める
世界中で見られる多くの社会的慣習は親の投資の偏りを示している(Rosenblatt & Skoogberg, 1974; Hrdy & Judge, 1993) 長子をひいきする親は、一般的に適応的なダーウィン的戦略を実行していると言える
親の遺伝子を次世代に伝達する機会を奪うような子供時代の病気をより多く回避してきたことを意味する
一つだけ重要な例外は、出産可能な年齢の末期に差し掛かった母親にとって、最年少の子は最後に産める子供
幼く未だか弱い年少児は取り替えがきかないので、ダーウィン的な観点に立てば、その子の生存の可能性を高めるために、親は最年少の子をひいきするはず(Sulloway, 1996; Salmon & Daly, 1998)
この仮説を支持する研究として、中間子は親から受ける投資が最も少ないことが示されている(Hertwig, Davis, & Sulloway, 2002; Rohde et al., 2003; Salmon & Daly, 1998)
進化生物学は、きょうだい間の葛藤の原因を理解する手助けとなる 生物学者は形質や行動の進化の説明をする究極要因と、個体の生涯の間に作用する個体発生的・生理学的・環境的影響で構成される至近要因を区別する(Mayr, 1961) きょうだい間の葛藤の究極要因は、きょうだい同士は遺伝的に異なっており、平均して半分しか遺伝子を共有していないという事実に根ざしている
Hamilton(1964a, b)が提唱した血縁淘汰の理論によれば、同じ両親から生まれたきょうだいは、きょうだいと争うことで得られる利益が、相手が被るコストの半分を上回るのならば、乏しい資源をめぐって争うはず 生物学者たちは、きょうだい間の葛藤は動物や植物の間で広く見られる現象であることを示している(Mock & Parker, 1997; Mock, 2004)
アオアシカツオドリ(Sula nebouxii)は食料が豊富なときは2, 3羽のひなを育てるが、繁殖期において食料が十分でなく、最年長のひなの体重が通常の80%まで落ち込むと、このひなは同じ巣にいる年下のひなをつつくようになる(Drummond & Garcia-Chavelas, 1989; Mock, Drummond, & Stinson, 1990) 食料が乏しいままの状態が続けば、最終的に最年長のひなはすべてのひなを追い出してしまい、追い出されたひなは死に至る
親鳥はこのような死を招くきょうだい間の争いに介入することはない
介入したところで、親の遺伝的利益にはつながらない
ヒトについても、世界的に見て一般的に年少児のほうが、両親の持つ限りある資源を年長児と分けなければならないために、死亡率が高い傾向にある(Hertwig et al., 2002) ダーウィンの理論に従えば、年少の弟妹は大きなリスクを冒してでも自分の潜在能力を発見し、それを強みとして伸ばすことで、親に投資の分配について再検討させ、自分の取り分を増やそうとすると予測される
例えば、後に生まれた子は、第一子の1.5倍の割合で、スカイダイビング、ダウンヒルスキー、ラグビーやフットボールといった危険なスポーツに従事する傾向にある(Sulloway & Zweigenhaft, 2010)
家族内研究(家族間の違いによって生じる交絡要因を統制できるので、家族間研究よりも望ましいとされる)では、5因子モデルで評定した正確に、出生順による明らかな違いが見られている(Paulhus, Trapnell, & Chen, 1999; Healey & Ellis, 2007; Sulloway, 1996, 2001, 2010) この性格モデルは、勤勉性、協調性、外向性、経験への開放性、情緒不安定性の次元からなる(Costa & McCrae, 1992)
第一子は、後に生まれた子よりもまじめになる傾向にある一方で、後に生まれた子(特に中間子)は協力的で協調性が高くなる傾向にある
外向性に関しては、この性格次元のどの側面に着目するかで結果が異なる 例えば、後に生まれた子に比べて、第一子は支配的という意味で外交的になる傾向にあり、後に生まれた子は社交的・遊び好き・リスク志向という意味において外交的になる傾向にある
開放性のいくつかの側面は知性を反映しており、第一子と一人っ子は後に生まれた子よりもこの特性のスコアが高い傾向にある
これに対して、後に生まれた子は、慣習にとらわれない・非同調的・反抗的・リベラルという意味で経験に対する開放性が強い傾向にある
ビッグファイブの性格特性である情緒不安定性については、出生順による違いはほとんどない この知見は、出生順による正確の違いの大部分はきょうだい間の葛藤に対する適応的戦略であり、少なくとも家庭内ダイナミクスの文脈において神経症的行動は特に適応的ではないことから筋が通っていると言える
一人っ子は大人びた傾向にあり、この点で弟妹がいる第一子と類似しているが、その他のほとんどの性格の側面については、一人っ子は第っしと第二子以降の子の中間に位置する傾向にある(Sulloway, 2001)
こうした結果になるのは、一人っ子が出生順の研究において、理想的な統制実験となっていることに由来する
一人っ子はきょうだいの影響を受けず、きょうだい間の葛藤も体験せず、直接的な競争を最小限に抑えるために特殊なニッチに分化もしないで成長したらどうなるかを体現している
一人っ子は、きょうだいとの付き合いなく育ったから自分勝手で環境に適応できないというステレオタイプに反して、両親や友人たちからバランスの取れた付き合い方を学んでいる(Ernst & Angst, 1983)
出生順による性格の違いは、概して効果が大きくない
家族内研究においては、これらの違いを相関係数で表すと、その加重平均は一般的に約.10程度(Sulloway, 2010)
これに比べ、性格における性差の相関係数の加重平均や約.15(Feigngold, 1994; Hyde, 2005)
特に家族間研究において明らかにされている出生順による興味深い違いの多くは、効果料がr=.10よりも小さいと言われている
例えば、第一子と第二子との間のIQの一般的な差は約2.9であり、これは点双列相関係数.09に相当する(Kristensen & Bjerkedal, 2007)
同様に、出生順と危険なスポーツへの従事度について調べた24の研究のメタ分析(N=8340)の結果、相関係数の加重平均は.08であることが示されている(Sulloway & Zweigenhaft, 2010)
出生順と社会的態度を調べた27の研究のメタ分析の結果、後に生まれた子がよりリベラルである傾向の加重平均相関は.07であることが示されている(Sulloway, 2001)
このわずかな効果を些細なものだとして切り捨てるのは概念的にも実質的な意味においても誤り
例えば、.07の相関は後に生まれた子がリベラル派の選挙立候補者に投票する確立が第一子の1.25倍であることを意味している
ただし、効果量が小さい場合、計画した研究の統計的検定力を推定することが研究者にとって極めて重要
例えば、真の相関を.07と仮定すると、出生順と社会的態度の研究においては、標本数が250人だけの場合、統計的に有意な結果が得られる確立はわずか19%
予測される効果量がr=.07であるときに、有意な結果を少なくとも80%の確率で得たいのならば、標本数を少なくとも1560人にする必要がある
出生順の研究の標本数は約256人であるため、ほとんどの研究は検定力が弱く、標本数の多い研究では統計的に有意な関係が見られる多くの行動特性に関して、帰無仮説を棄却できない論文が量産されている(Suloway, 2002) 出生順の研究においては、メタ分析が便利なツールとして浸透していて、これにより異なる結果を示す別々の関連研究を集めて全体の効果量を計算し、少なくとも一貫して存在する効果を検出することができる メタ分析は効果量をより正確に推定するだけでなく、これらの効果の発言に関わる調節変数を探す手助けにもなる
例えば、出生順による社会的態度の違いは、家族間研究よりも、家族内研究において有意に大きいことが明らかとなっていて、これは家族間研究ではきょうだいの数や社会経済的地位の違いが適切に統制されていないためと考えられる(Sulloway, 2001, 2010)
社会的態度の出生順による違いは、質問紙調査よりも実生活データを扱った研究で大きくなる
さらに社会的態度に関する歴史的研究(historical study)は、一般的に現代の研究よりも出生順による違いが大きくなる傾向にある
これは、過去にあった長子相続制などの文化的慣習が親の投資の偏りを助長し、たいていは長子に有利に働いたことを反映しているためかもしれない
出生順の違いは、きょうだいの違いを生み出す多くの要因の一つでしかない
遺伝的な違いに加え、親からの投資の格差、愛着のパターン、親の死亡や離婚、ジェンダー、年齢差、きょうだいとの異質化といった他にも重要な要因がある
最後に上げた要因に関しては、特に出生順が一番近いきょうだいと性格や興味が大きく異なるよう発達する傾向が知られている(Schachter, Gilutz, Shore, & Adler, 1978)
これは時として、別親との同一化として知られる、他のきょうだいが両親のどちらにより強い愛着を持っているかに応じて、自身はもう片方の親とより緊密な関係を築くことにも繋がる(Schachter, 1982) 性別や人種のステレオタイプと同様に、出生順のステレオタイプは、実際の出生順による差とは独立に、行動に影響を及ぼすようだ
ただし、ステレオタイプと実際に差には似ている部分もある(Herreza, Zajonc, Wieczorkowska, & Cichomski, 2003)
出生順や家族におけるニッチが性格に及ぼす影響について、興味深い未解決の問題は、これらの影響が家族関係を超えて、大人になってからの家族以外との人との付き合いにおいて、どれくらい発現するかという問題
数々の研究成果が、出生順の心理的発現は家族内よりも家族外の文脈において小さいことを示している(Sulloway, 2001, 2002, 2010)
とりわけ知見が不足しているのが、家族内で学習された役割や行動が個人の行動レパートリーの中に潜伏し、おとなになってから特定の行動文脈に刺激されて発露する、そのメカニズムについて
プライミングなどの実験的手法を用いた研究が、家族内・家族外の行動の連続性に関するこれらの問いに答える上で必要となるだろう
家族内できょうだいとの関わりを通して生まれる性格や行動のわずかな個人差をダーウィンが認識していたら、それに一目置いたことだろう
ダーウィンは、自然淘汰は主としてわずかな個人差へ働きかけると考えていた 「自然淘汰は、世界のいたるところで一日もいっときも欠かさずに、ごくごくわずかなものまであらゆる変異を精査していると言ってよいだろう。悪い変異は破棄し、良い変異はすべて保存し蓄積していく……機会さえ与えられれば、あらゆる時と場所で静かに少しずつその仕事を進めている」(Darwin, 1859, 渡辺政隆訳, 2009)
自然淘汰という進化の仕組みは、個体発生的分化と関わる様々な至近的要因とは異なるものだが、わずかな差が少しずつ蓄積していくことによって驚くべき帰結に到達する点は共通
きょうだいが驚くほど異なっているのは、家族内に由来するたくさんのわずかな差異が、はるかに広範な変異の幅が生じる要因となり、その結果として一部の人々は必然的に正規分布の両端に位置することになるため
斬新で急進的な科学イノベーションを広めようとしたという点で、ダーウィン自身も異端児だった
経験への開放性の多変量測定に基づくと、ダーウィンは1543~1967年にかけて活躍した1600人以上の学者のうち、上位1%のさらに2分の1に入る(Sulloway, 1996)
私が著書の"Born to Rebel"で述べたように、ダーウィンの進化理論に対する開放性は、幸いにも彼の知的な気性を急進的な方向へ導いた数々の個人差の当然の結果であったと言える(Sulloway, 1996)
6人きょうだいの5番目というダーウィンの出生順は、異端な科学アイディアを支持しようとする彼の尋常ではない意欲に大きく貢献した要因の一つに過ぎない
ダーウィンはリベラルな家庭で育ってリベラルな宗教を信奉し、政治的見解もリベラルだった
若い科学者は、すでに地位が確立した高齢の科学者よりも急進的な革命を受け入れる傾向にあるため(Sulloway, 1996, 2009b)、年齢も重要な要因
5年間にわたるビーグル号での世界一周の旅を通して、種の分布の地理的パターンという決定的証拠、特に種の数の増大において地理的隔離が重要な役割を果たすということをたびたび目の辺りにして、彼は進化に肯定的な見方をする傾向を強めた
ダーウィン理論への参道を8つの変数から予測する多変量モデルによると、ダーウィン自身が進化論を支持した確立は、400人以上の同時代の研究者のデータに基づいて推測すると、約94%だった(Sulloway, 1996)
同様に、1853年に自然淘汰の理論を一緒に発見し、ダーウィンと同じく進化論受容を準備するような家族内ニッチの中で育ったアルフレッド・ウォレス(Alfred R. Wallace)も、96%の確立で進化理論を受け入れたと予測された ダーウィンが科学的志向に未だにインパクトを与え続けていることを示すものの一つとして、彼のアイディアが心理学の分野にもひらめきを与え続けているという点を挙げることができる
『種の起源』の最後の章「心理学は新たな基盤となるだろう……人間やその歴史の起源についても光が当てられることだろう」(Darwin, 1859)
進化心理学は"The descent of Man"(1871)や"The Expression of the Emotions in Man and Animals(人及び動物の表情について)"(1872)において鮮やかに展開されたダーウィンの大胆な主張の遺産を受け継いでいる